2020.2.27
活動報告
(一社)中部圏イノベーション推進機構〔会長:豊田鐵郎 中経連会長〕は、悩める現代のビジネスパーソンに向けて、識者を集めた「~大人の学びなおし~ デジタル時代の価値観を考えるリベラル・アーツ講座」を開講した。
本講座は、1月28日(火)を皮切りに計10回開催し、人生100年時代に求められる「背骨」となる価値観を考える機会を提供していく〔領域:文明、音楽、メディア、歴史、哲学、倫理、宗教、絵画、文学〕。
1月28日(火)に開催した本講座のキックオフ講演会には36名(受講者のほぼ全員)が出席した。静岡文化芸術大学学長の横山俊夫氏より「天地文明の学び-老いも若きも事始め-」と題して講演をいただいた。
<講演要旨>
1.ことば直し
文明とは古くからある漢語で、天地人が文(あや、美しい織物のような)をなし、明らかに輝いていることを言う。人だけでなく、生命全体の賑わいが続く世を表している。しかし、近代に「civilization」の訳語として「文明」の語があてられてから、「文明」の意味が貧しくなった。現代の課題はそうした古典的な意味での“文明化”を復権させることであり、そのための鍵は「ことば直し」である。1650年に京都の安原貞室が著した『かたこと』でも、ことば直しが提唱されたが、貞室が考えた「よき言葉」とは、「そのおりふしと むかう人によるべきこと」、すなわち、天候をはじめ、その折々の状況と、話しかける相手の心情に応じて言葉を選んで使いたいとしている。また、18世紀日本のロングセラーとなった、大坂生まれの手紙指南書である『文林節用筆海往来』では、編者の山本序周が、望ましい文章則として、平明であること、正確であること、文字学びを怠らぬこと、なだらかであること、卑しくないこと、をあげている。
序周の文章則(横山氏の提供資料より作成)
一. 平明であること(やつしたる敬い、匂わせぶりを避ける)
一. 正確であること(読み返し、明後幾日と日付も明記)
一. 文字学びを怠らぬこと(少し学んで人の非を笑うなかれ)
一. なだらかであること(自説を押し付けず、打付けに褒めず)
一. 卑しくないこと(卑しいのは、偽りの言い訳、噂話)
2.全体を問う
文明化のためのもう一つの鍵は「全体を問うこと」である。鎖国期の日本では陰陽五行説風の宇宙的全体感覚があった。すなわち、自分や他者が宇宙に占めるべき位置や、それに応じた互いの相性を考える習いである。単純に善悪に分類したり、優劣を競うのではなく。
3.まとめ
現代においても「よきことば」を求め、現代にふさわしい宇宙感覚を育てながら、人々が当面の利害を超えて忌憚のない対話を続けることが、まずは第一歩か。