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「ポール・マデン駐日英国大使閣下講演会」(11/30)報告

 

1130日(木)、中経連は「ポール・マデン駐日英国大使閣下講演会」を名古屋市内にて開催し、31名が参加した。講演要旨は以下のとおり。

 

 

 

演題 駐日英国大使が語る英国の最新状況

講師 駐日英国大使 ポール・マデン閣下 

 

 

【講演要旨】

日本と英国は自由、民主主義、法の支配、人権という基本的な価値観を共有することで、良好な二国間関係が築かれている。8月には安全保障や経済面で日英間のパートナーシップをより強固にすることで合意し、安全保障協力等について両国首相より共同声明が発表された。EPA(経済連携協定)も早期合意で一致し、EU離脱後も同様の協定を維持することが合意されている。

日本の英国への累計投資額は400億ポンド(6兆円)に達し、米国に次ぐ第2位となっている。製造業を中心に進出企業は1,000社以上、現地雇用数は14万人以上となり、離脱決定後も増加傾向にある。また、英国の産業政策にとって、自動車製造やヘルスケア、IT、金融サービス等の幅広い分野で、日本企業が英国で果たす役割は大きく、大切な存在である。

Brexit交渉は、2019年3月29日の離脱に向けて、条件が焦点となっているが、交渉の取り組み内容について多くの日本企業の皆様のご意見を聞く機会を得て、交渉に全力をあげている。

離脱は、英国経済に甚大な影響を及ぼすと言われていたが、2016年の経済成長率は1.8%であり、2017年の最新予想でも1.6%を維持している。失業率も低下傾向にある。物価上昇率は2.8%まで上昇しているが、今後緩やかに低下する見込みである。この予想に反した経済状況の背景のひとつにはポンド安がある。国民投票前には1.5ドル=1ポンドだった為替相場が、現在1.3ドル=1ポンドに低下している。このポンド安を受け、訪英観光客は前年から150万人増、さらに今年は4,000万人に達すると見込まれている。観光は一層英国の魅力的な産業となるだろう。加えて、英国には世界トップ10の大学が3校あることや、ロンドンの卓越したインフラ整備は中東・アフリカをはじめとする世界へのアクセスの拠点となっており、離脱後も英国の魅力として維持していきたい。

現在、離脱による経済的な影響をできるだけ回避すべく、EUとの自由貿易協定の締結を目指している。EU・英国間の協定内容に大きな差異はなく、両者の自由貿易制度や仕組みをいかに維持するかが交渉のカギとなっている。GDP世界第5位の経済を維持するためにも、一刻も早い交渉妥結に尽力している。離脱後はEUと協定が不締結の米国やオーストラリア、ニュージーランド、インド、パキスタン、バングラデシュ等と貿易協定を結ぶことができる可能性も投資の魅力となるだろう。その他では、国連安保理事会やNATO、G7、G20等の枠組みの中でも、日英間に繁栄をもたらす関係性を深め、責任ある欧州の国として、真のグローバルな英国(グロー バルブリテン)を目指したい。

英国へ投資している中部圏の企業の皆様には一層の、これからの投資をお考えの皆様には新たに、ご協力・ご理解をいただき、中部圏と英国との経済的なつながりをさらに強化していきたい。

 

 

[プロフィール]

ケンブリッジ大学にて経済地理学の修士号を取得。ロンドン大学東洋アフリカ学院で日本語を学び、1982年に日本国外務省主催のエッセイ・コンテストにて優勝。1988年から92年まで、最初の海外勤務地として日本に赴任。その後、2005年の愛知万博では英国パビリオンの責任者を務める。2007年よりオーストラリア、シンガポールで大使を務めた後、アジア太平洋州特別局長を歴任し、赴任先の大半をアジアで過ごす。2017年1月、駐日英国大使として着任。

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