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北米イノベーション拠点視察(9/8~16)報告

中経連は、9月8日(土)~9月16日(日)の9日間、アメリカ(オースティン、ボストン)、カナダ(ウォータールー)のイノベーション拠点視察を実施した。中経連からは藤原常務理事事務局長、イノベーション委員会の大津留特別参与をはじめ5名、会員・関連企業からは岡谷鋼機(株)、三菱商事(株)、新東エンジニアリング(株)から3名が参加した。(ボストンではバブソン大学も訪問したが、本報告ではイノベーション拠点にテーマを絞る。) 

昨今、ビジネスモデルや産業構造が変化している中でスタートアップの重要性が高まりつつある。しかし、中部圏ではスタートアップが活動しやすい制度や環境が不足していることから、今回の視察はイノベーションを促進するための拠点として世界的に大きな成果を上げている機関を訪問し、施設の設置目的や運用の実態、成果の状況を調査してベンチマークするとともに、中経連の取り組みを説明して将来の地域間連携の可能性を探ることを目的として行った。 

各拠点の視察概要

1.アメリカ テキサス州オースティン

オースティンはカウフマン財団のランキング(2015-2017)でアメリカNo.1のスタートアップ都市に認定されており、経済面でも活気に溢れている。また、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組みあわせた大規模イベント「サウス・バイ・サウスウエスト」に代表される音楽の街としても魅力的である。こうしたオースティンの競争力・高い魅力の源泉にあるのがテキサス大学オースティン校(UT)。生徒数は約5万2,000人で全米第2位の規模である。

◆イノベーションクリエイティビティキャピタル(IC²)

1977年、UTのビジネススクールのコズメツキー博士が設立した“Think & Do Tank”で、UTの付属機関。「ここではじめることが世界を変える」を目標に活動し、「INNOVATION」「CREATIVITY(=創造性)」「CAPITAL(=資本)」を組みあわせることで地域経済の成長の触媒になっている。後述するATIの設立をはじめ、オースティンの地域産業戦略を導く司令塔的存在である。

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<IC2 グレゴリー・ポーグ博士のプレゼンテーション>

◆オースティンテクノロジーインキュベーター(ATI)

1989年、IC²の下部組織としてスタートし、既に30億ドル以上の経済効果をあげている。重点領域はIT分野に加え、「エネルギー・運輸」「水・食料」「循環経済」「ライフサイエンス・バイオテック」の4分野であり、これらの分野でUTと企業の触媒となり、UTの人材(学生・教授・博士人材)や技術と企業のビジネスを結びつける役割を果たしている。

 

2.アメリカ マサチューセッツ州ボストン

ボストンはハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などのハイレベルな大学が多く、100余りの大学がひしめく学生街となっている。全大学の学生数は約25万人で高い技術を持ったスタートアップが数多く誕生しており、2010年以降の新規開業社数は1万社を超えている。こうした状況下で起業支援組織やメンターも多い。また、スタートアップを取り囲むように個人投資家やベンチャーキャピタル(VC)も集まっており、全米の投資額の約1割がマサチューセッツ州に投資されている。このように狭い地域に大学、企業、投資家やVC、さらに州や市の公的機関が集中していることから、それぞれの距離感が近く、人の交流が生まれやすい地域である。 

◆ケンブリッジイノベーションセンター(CIC)

1999年、MITの卒業生であるティム・ロウ氏が、①スタートアップ向けのサポート提供、②コミュニティづくりによるイノベーション活性化、③スピード感をもったビジネスと異業種交流を促進できる拠点を目的に創業し、主に「コワーキングスペースの提供」「ネットワーキングイベント運営」「イノベーションコンサルティング」を行っている。現在、入居企業は約1,200社でライフサイエンス、ソフトウェア、教育系で約半数を占める。また、入居者間の交流を図るために、恣意的に各フロアに誘因を配置する仕掛けがされている点が特徴的である。

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 <CIC内にカフェがあり、フロア相互で交流できる仕掛けができている>

  

3.カナダ オンタリオ州ウォータールー

かつては製造業が主力産業であったが、この15年間でハイテク・IT産業へのシフトが加速している。カナダで最も速く成長している地域であり、ハイテク企業の集積数はアメリカのシリコンバレーに次いで世界第2位。人口は約50万人で半径15㎞の範囲にスタートアップが約2,000社ある。

◆コミュニテック

1997年、カナダ最大のソフトウェア会社オープンテキストのP.トーマス・ジェンキンス会長らCEO5人が共同設立。ミッションは「会社を立上げ、会社を成長させ、会社を成功させること」であり、これは設立当時から変わっていない。また、設立当時は別の場所にあり、広さは約2,000㎡であったが、2010年に現在の場所へ移転し、その後拡大。現在の広さは1階から3階まであわせて約1万2,000㎡、会員数は約1,400社となっている。
コミュニテックは「PLACE」「ECOSYSTEM」「PROGRAM」の3つを1つの場所で展開している。PLACEとは、起業家が集まって情報交換できる場の提供であり、ECOSYSTEMとは、地域のあらゆる機関(大学、企業、地域政府、経済団体など)と結びつくとともに、地域の有能な人材を引き込み、その人材の能力を発揮できる環境をつくっていくこと、PROGRAMとは、会員に価値のある活動をしてもらえるよう、さまざまな情報提供の場や教育の機会、メンターによるアドバイス支援、さらに政府施策に対する意見具申・交渉等を行うことである。現在、世界各国から来訪者があり、その数は年間1万6,000人を超え、来訪者がコミュニテックの活動内容を持ち帰り、それを広めてくれることもコミュニテックの成功につながるという。 

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 <視察団一行コミュニテックにて> 
 

所感

今回視察した各拠点は、いずれもイノベーションを引き起こす装置がシステムとして出来上がっており、見事に成功を収めていた。
イノベーションを引き起こす集積ポイントは、①スポーツ、芸術イベントとの融合や知識層を集めるネットワーク活用、インフラづくりによる知識層の引き寄せであり、地域教育にも注力している点、②大学群、研究機関、知識創造型企業群(デジタル/IoT、バイオ、軍需)などを融合するイノベーション拠点が明確にその存在をアピールしている点であった。また、常に次の手を打ち続けるとともに、海外や域外とのネットワーク形成に熱心な点も共通していた。
中経連からは視察先に対し中部圏の魅力をアピールするとともに、中部圏におけるイノベーション促進に向けた中経連の取り組みや諸課題を説明し、視察先の理解を得た。今後もこれらの機関と互いに良好な関係を構築し、中部圏のイノベーション促進につなげていきたい。

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